1997年12月、子どもたちが楽しみにしていたポケモンのアニメを見た後、全国で次々と子どもが倒れるという衝撃的な出来事が起きました。
「ポケモンショックで死亡者は出たのか」「後遺症はどうなったのか」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
この事件は「ポケモンショック」と呼ばれ、ピカチュウの「10まんボルト」による激しい光点滅が引き起こした光過敏性発作が原因とされています。651人が救急搬送され、世界のテレビ史上初の大規模放送事故として記録されました。
この記事では、ポケモンショックで死亡者は出たのか、重症事例はどうだったのか、そしててんかんやPTSDなどの後遺症の実態から、ポリゴンの追放問題や現在のアニメへの影響まで、ソース情報をもとに詳しく解説します。
- ポケモンショックで死亡者は報告されていないが、大阪市の5歳女児が一時意識不明の重体になった
- 原因はピカチュウの「10まんボルト」による4秒間・106回の激しい光点滅(光過敏性発作)
- 651人が救急搬送され、てんかんやPTSDなど長期的な後遺症に苦しんだ人もいる
- この事件がきっかけとなりアニメ冒頭の警告テロップが生まれ、放送ガイドラインが策定された
ポケモンショックで死亡者は出たのか?放送事故の全容と症状
- 1997年12月16日に放送されたポケモン第38話「でんのうせんしポリゴン」が引き起こした世界初の大規模放送事故
- 死亡者の報告はないが、大阪市の5歳女児が約1時間にわたり命の危険にさらされた重症事例がある
- ピカチュウの「10まんボルト」シーンで4秒間に106回の激しい赤青点滅が光過敏性発作を引き起こした
- 651人が救急搬送され、読売新聞報道では1万人以上が何らかの症状を訴えたとされている
ポケモンショックとは?1997年に起きた放送事故の全容

ポケモンショックとは、1997年(平成9年)12月16日(火)にテレビ東京および系列局で放送されたテレビアニメ「ポケットモンスター」第38話「でんのうせんしポリゴン」を視聴した一部の子どもたちが光過敏性発作を起こし、救急搬送された放送事故です。
放送時間は18時30分〜19時00分の30分枠でした。ビデオリサーチ社の調査によると、視聴率は関東地区で16.5%、関西地区で10.4%を記録しており、各局の同時ネットにより4歳から12歳にかけて約345万人が視聴していたと推定されています。
この第38話は、主人公サトシたちがコンピュータによるポケモン転送システム内に侵入するという内容で、電脳世界を表現するためにパカパカ・ストロボ・フラッシングと呼ばれる激しい光の点滅が多用されていました。テレビ東京が事後に配布した報告書によれば、1秒間以上の点滅が25箇所にわたって使用されていたとされています。
放送終了後、視聴していた一部の子どもたちが体調不良を訴え、全国各地で次々と救急車が呼ばれる事態となりました。自治省(現・総務省)消防庁の調べでは、全国30都道府県で651人が病院に搬送されています。そのうち約9割以上が小中学生の児童でした。
一つのテレビ番組を見ていたことで700人近くが病院に搬送されたのは、世界のテレビ史上初の出来事とされています。「ポケモンショック」というのは俗称で、「ポリゴンショック」「ポケモンパニック」「ポリゴンフラッシュ」などとも呼ばれています。また、この事件はギネス世界記録に「最も多くの視聴者に発作を起こさせたテレビ番組」として認定されています。

ポケモンショックで死亡者は出た?命の危機に瀕した重症事例

ポケモンショックが原因となった死亡者は報告されていません。
しかし、死者が出なかったのは幸運であったとも言えます。重症になった患者のうち、大阪市平野区の当時5歳の女児は、痙攣や意識混濁で人工呼吸器を装着するなど、約1時間にわたって命が危険な状況であったとの報告があります。名古屋では吐血した小学生がいたという報道もあり、「一歩間違えれば死者が出てもおかしくない状況だった」との指摘もあります。
搬送者数については、消防庁の当初発表では651人ですが、翌日のNHK夜7時のニュースでは729人が病院で手当てを受けたと報道されました。入院者数についても、消防庁の集計では17日午後5時までの段階で意識不明などの重症者3人を含む208人が入院したとの報告があります。
また、放送から数日後にも、録画を見た人を中心に100人程度が搬送されたとの情報もあります。ポケモンショックは放送中のリアルタイム視聴者だけでなく、録画視聴者にも発生しており、子どもだけでなく42歳の大人も録画視聴で症状が出たという事例も伝えられています。
病院に搬送されなかったものの何らかの影響を受けた人の総数は数千人に達すると推定されており、被害の規模は搬送者数をはるかに上回るものでした。
光過敏性発作とは?ピカチュウ10まんボルトが引き起こした原因

ポケモンショックの根本的な原因は、パカパカ・ストロボ・フラッシングなどの激しい光の点滅です。特に発作のきっかけとして問題視されたのが、ピカチュウの技「10まんボルト」がワクチンソフトのミサイルを迎撃するシーンです。
テレビ東京の報告書によれば、このシーンは18時51分34秒から始まり、4秒間で106回の点滅が記録されています。点滅の内容は赤と青の光が交互に激しく映し出されるもので、1秒間に約20〜30回の点滅が繰り返されたとされています。また、この1シーンに限らず、全編で1秒間以上の点滅が25箇所に及んでいたとされています。
光過敏性発作とは、視覚から入った光の刺激が原因で脳が過剰に興奮し、さまざまな発作症状を引き起こすものです。光刺激への耐性は個人差が大きく、同じ光を見ても発作を起こす人もいれば、眩しく感じる程度で済む人もいます。
また、暗い部屋でテレビを視聴していたこと、テレビに近い距離で見ていたことも被害拡大の要因として指摘されています。人気アニメを熱心に視聴する子どもたちの視聴環境が、被害の広がりに影響した面もあったようです。
ポケモンショックの症状と被害の実態 1万人以上に影響か

ポケモンショックによって引き起こされた症状としては、痙攣発作・意識障害・視覚系症状・頭痛・吐き気・めまい・卒倒・不定愁訴・不快気分などが報告されています。
消防庁の発表によれば651人が救急搬送されましたが(729人との報告もあります)、実際に体調不良を感じた人の数はさらに多かったとみられています。18日の読売新聞朝刊では「各地の教育委員会の調査では、小学生を中心に病院には行かないまでも、1万人以上が吐き気などの症状を訴えていたことが分かった」と報道されています。さらにある新聞社は、教育委員会のデータなどをもとに症状が出た人の総数は1万3000人にのぼるとの推定記事を掲載したとの情報もあります。
この日の視聴者は約345万人とされていますので、約300人に1人の割合で体調不良になった計算になります。
体験者によると、次回予告のあたりでめまいが起き、翌朝まで意識を失っていたという事例もあります。また別の体験者は、白目をむいて痙攣し、救急車で搬送されたと証言しています。症状の程度は個人差が大きく、軽度の頭痛やめまいで済んだ人から、意識を失って入院を余儀なくされた人まで幅広い被害が出ました。
ポケモンショックのその後 後遺症・ポリゴン問題と現在への影響
- てんかんの発症やPTSDなど、ポケモンショックをきっかけに長期的な後遺症に苦しんだ人たちがいた
- 「でんのうせんしポリゴン」のタイトルから「ポリゴンショック」と呼ばれたが、主因はピカチュウの「10まんボルト」であり「世紀の冤罪」とも呼ばれる
- 約4ヶ月の放送休止を経て1998年4月16日に放送再開し、NHKと民放連による放送ガイドラインが策定された
- アニメ冒頭の警告テロップやITU-R勧告など、ポケモンショックの影響は現在まで続いている
ポケモンショックの後遺症 てんかん発症とPTSDに苦しんだ人たち

ポケモンショックで救急搬送された人は、入院した人も含めて回復して退院しています。しかし、その後も長期にわたる後遺症に苦しんだ人がいたことも事実です。
後遺症として多く報告されているのが「てんかん」の発症や悪化です。インターネット上には、ポケモンショックによってんかんなどの神経疾患を発症したと訴える声が複数見られます。ポケモンショックをきっかけに既存のてんかんが発見されたケースもあったとの情報もあります。
実際に体験者の証言によれば、ポケモンショックでてんかんを発症し、薬を7年間飲み続けたという方もいます。また、てんかん発症後に記憶力が著しく低下し、学校の成績が大きく落ちてしまったという体験談も伝えられています。
もう一つの後遺症として報告されているのがPTSD(心的外傷後ストレス障害)です。「テレビやパソコンの画面を普通に見られなくなった」という精神的後遺症を訴えた方や、事件の記憶がフラッシュバックするようになり、テレビを見るのが怖くなってしまったという声も見られます。
なお、ポケモンショックの後遺症で失明したという噂がインターネット上に存在しますが、信頼性のある情報源は確認できず、真偽は不明とされています。
体験者の一人は放送当日に白目をむいて痙攣し、1週間入院して脳波検査(暗い部屋で明滅する赤青の光を見る再現実験)を受けたと語っています。その方は後にポケモンへの愛着は変わらなかったと述べており、子どもたちがポケモンというコンテンツ自体を嫌いになったわけではないことも伝わってきます。
濡れ衣を着たポリゴン 「世紀の冤罪」と呼ばれるアニメ追放の経緯

ポケモンショックが「ポリゴンショック」とも呼ばれるのは、問題となった第38話のタイトルが「でんのうせんしポリゴン」であり、CGポケモンの「ポリゴン」がメインキャラクターとして登場していたためです。
しかし、発作の主な原因となったのはポリゴンではなく、ピカチュウの技「10まんボルト」のシーンでした。ほとんどの被害者がこのピカチュウのシーンで症状を訴えていたとされており、「真犯人はピカチュウ」という指摘もあります。
それにもかかわらず、ポリゴンはこの事件以降、アニメ本編に一度も登場していません。進化系のポリゴン2やポリゴンZも同様に、2025年現在まで本編への登場はないとされています。第38話は修正不能と判断され、欠番扱いとなっています。
ファンの間では「悪いのはアニメの制作陣でポリゴンじゃない」「かわいそう」という声が多く上がっています。英語版ポケモン公式Twitterが「404 Error Porygon not found」「Porygon did nothing wrong」とツイートしたこともあり、大きな反響を呼びました(後に一方のツイートが削除されています)。
また、ポリゴンのカードを持っていると交通事故に遭うという根拠のない噂が広まったとの報告もあり、ポリゴンはさまざまな風評被害を受けることになりました。事件のタイトルに名前が入っていたがために、何もしていないポケモンがアニメから追放されたこの経緯は、「世紀の冤罪」とも呼ばれています。
約4ヶ月の放送休止を経た再開と放送ガイドラインの策定

ポケモンショックを受け、テレビ東京はポケモン関連番組の放送を一律休止することを発表しました。「おはスタ」でのポケモン関連情報の取り扱いも自粛され、年末年始の特別番組も相次いで差し替えられることになりました。
放送休止の期間は当初未定でしたが、アニメの再開を望む声は多く、1998年1月30日までにテレビ東京に寄せられた意見3,076件のうち、放送再開を望む意見は2,223件(全体の72%)に上りました。
事件後、NHKと民放連は共同でガイドラインを策定する協議を進め、1998年4月8日に「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」を発表しました。ガイドラインには「1秒に5回を超える点滅は禁止」「点滅は連続して2秒以内」といった放送基準が盛り込まれました。
また、郵政省(当時)は放送法の目的等に違反するとして、1998年4月5日にテレビ東京に対して厳重注意を実施しています。経済的な影響も大きく、任天堂の株価が3.2%下落し、ゲームボーイライト・カラーの発売が延期される事態にもなりました。
ガイドライン発表を受け、ポケモンは放送枠を火曜日から木曜日に移動し、1998年4月16日に約4ヶ月ぶりの放送再開を果たしました。再開時の視聴率は16.2%を記録しています。
現在まで続く影響 アニメの警告テロップはポケモンショックから始まった

テレビアニメを見るときに「テレビを見るときは部屋を明るくして離れて見てください」というテロップが表示されるのを、当たり前のことと感じている方も多いかもしれません。この慣習は、ポケモンショックをきっかけに始まったものです。
現在もほぼ各アニメの開始時に注意テロップが表示されるようになったのは、この事件の直接的な影響です。放送ガイドラインの策定によりアニメやゲームでの点滅シーンは大幅に減少し、DVD・配信版でも点滅箇所が修正された作品があります。
国際的な影響も生まれました。ITU-R(国際電気通信連合)が2005年に「テレビ映像による光感受性発作を抑えるための指針」を策定したのも、ポケモンショックが世界的な問題提起となったためです。
さらに、アメリカの雑誌がアメリカ・ロシアが光線点滅兵器の開発に着手しているとの記事を掲載したという情報もあります。ポケモンショックで実証された光の点滅の人体への影響が、軍事的な観点からも注目されたとのことです。
海外では「ザ・シンプソンズ」や「サウスパーク」などの人気アニメでポケモンショックがパロディ化されるほど、広く知られた出来事となっています。なお、時折放送ガイドライン違反の映像が報告されるケースもあり、現在も問題が解消されているとは言いきれない状況のようです。
ポケモンショックはギネス世界記録に「最も多くの視聴者に発作を起こさせたテレビ番組」として認定されており、その影響の大きさを示しています。
ポケモンショックの死亡者・後遺症・影響まとめ
この記事のまとめです。
- ポケモンショックは1997年12月16日にテレビ東京系列で放送されたポケモン第38話「でんのうせんしポリゴン」が引き起こした放送事故である
- 放送時間は18時30分〜19時00分、視聴率は関東16.5%・関西10.4%で約345万人が視聴していたと推定された
- 全国30都道府県で651人が救急搬送され、うち208人(重症3人含む)が入院したとの報告がある
- ポケモンショックで死亡者は報告されていないが、大阪市の5歳女児が約1時間にわたり人工呼吸器を装着するほどの危険な状態だった
- 名古屋では吐血した小学生がいたという報道もあり、一歩間違えれば死者が出てもおかしくない状況だったとの指摘がある
- 主な原因はピカチュウの「10まんボルト」シーンで、18時51分34秒から4秒間・106回の激しい赤青点滅が起きた
- 光過敏性発作は視覚から入った光刺激が脳を過剰興奮させて引き起こされ、個人差が大きい
- 読売新聞報道では小学生を中心に1万人以上が何らかの症状を訴えたとされ、1万3000人との推定記事もある
- 後遺症としててんかんの発症や悪化を訴える声が多く、薬を7年間飲み続けた体験者もいる
- テレビやパソコン画面を普通に見られなくなったPTSD的な精神的後遺症の報告もある
- 事件のタイトルに名前があったポリゴンはアニメ本編から追放され、進化系のポリゴン2・ポリゴンZも2025年現在まで本編に登場していない
- ポリゴンの実際の役割は軽微であり「世紀の冤罪」とも呼ばれ、ファンから「かわいそう」との声が多い
- 約4ヶ月の放送休止を経て1998年4月16日に放送再開し、NHKと民放連が放送ガイドラインを策定した
- 「テレビを見るときは部屋を明るくして離れて見てください」という現在のアニメ冒頭テロップはポケモンショックから始まった
- ITU-Rが2005年に国際指針を策定するなど、ポケモンショックの影響は国内外で現在まで続いている

